「試すこと」の意義
(2025年7月 港区お台場アカデミー学校運営協議会だより)
6月13日の学校運営協議会では,校長先生の提案に対して活発な議論が展開されました。本校の開門時刻は8時10分ですが,出勤時刻の早い保護者のご家庭の児童を対象に,開門時刻30分くらい前に登校できるようにして学校で遊んだり学んだりできるようにすることを,7月に2週間程度試行したいという提案でした。
この提案に対して学校運営協議会の会議では,希望する家庭はどの程度あるのか,登校途中や開門時刻までの校内での安全管理をどうするのか,教員の勤務時間開始前に誰が児童の様子を見守るのか,児童が午前中で疲れてしまうのではないか,むしろ落ち着いて生活できるようになることも期待されるのではないかといった意見が出されました。そして,これらの意見に対する解決策を具現化するためにも,試行を実施し検証を行うということでまとまりました。
学校では児童生徒を対象に様々な指導や支援が行われていますが,どのような手立てであっても全ての児童生徒に等しく効果をもたらすことはないということは,教育心理学が長年にわたって明らかにし続けてきたことでもあります。薬の効き目が全ての人々に対して同じではないように,効果的な手立ては児童生徒が持ち合わせた個性や背景によって違いがあります。
これまで行われてきた指導方法も,新たに開発された学習方法も,どのような児童生徒にとって効果的なのか,むしろ不利に働く児童生徒はいないかといったことは,十分に明らかにされていません。仮にこのようなことが明らかになっている場合であっても,これらの手立てが行われる場の違いによって効果が変わる可能性もあります。
ある手立ては誰に効果的なのか,条件によって効果が異なるのか,不利益を被る児童生徒はいないか,効果の現れ方が異なる様々な手立てはどう組み合わせるのが理想的なのか。これらは,「試すこと」を通じて初めて明らかになります。より多くの児童生徒にとって,より「よい」教育を実践するためには,「試すこと」を積み重ねていく必要があるでしょう。
学校運営協議会では先生方の「試すこと」を応援し,時には手助けしながら,児童生徒がいきいきと楽しく学ぶことができる学校づくりを推し進めていきます。先生方には「試すこと」に積極的に取り組んでいただくとともに,保護者や地域のみなさまには,先生方が「試すこと」の意義をご理解いただければと思います。
(学校運営協議会長 山森光陽)

