生成効果の実験
背景
- 生成効果(generation effect)とは,学習者が自ら能動的に情報を生成した場合の方が,単に読んだだけの場合よりも記憶保持が優れるという現象である。
- 高橋・梅本(1990)は,特定領域(交通法規)の文を材料として,高知識者と低知識者を対象に読み条件と生成条件の記憶成績を比較した。その結果,再生においては知識量や文のタイプに関わらず生成効果が認められた一方,偶発学習における再認では高知識者においてのみ生成効果が認められ,生成効果が学習者の特性とテスト形式に依存することを示した。
実験
- 高橋・梅本(1990)の実験2(意図学習)をもとに,材料を心理学の専門用語の定義文に変更し,集団実験形式で実施するものである。
- 読み条件では刺激文をそのまま音読させ,生成条件では刺激文を意味単位に分割してランダムに提示し,正しい語順に並び替えて音読させる。両条件を1文ずつ交互に呈示し,2ラウンドの学習を行う。
- 実験は以下の3つのアプリケーションを用いて実施する。
- 集団実験用スライド:学習フェーズ(読み条件・生成条件を交互に呈示)と手がかり再生テストを自動進行するスライドアプリ。実験者がプロジェクターに映して使用する。読み条件の呈示時間は10秒,生成条件は20秒,手がかり再生テストは3分間。
- 再認テスト:学習した12文に対する4択の多肢選択再認テスト。各項目に「正しい文を選びなさい」という教示を表示し,全問回答後に読み条件・生成条件別の正答率をフィードバックする。回答後に学籍番号を入力して成績を提出する。
- 結果分析アプリ:Google Sheets API を通じてスプレッドシートからデータを取得し,記述統計・対応ありt検定・Cohen’s d・棒グラフ(±1SD エラーバー)・個人別散布図を表示する。データ収集日時による絞り込みも可能。
結果と考察
- 生成効果の検討
- 再認テストにおいて,生成条件の正答率が読み条件の正答率よりも高くなるか(生成効果の再現)。
- 対応ありt検定により,読み条件と生成条件の正答率の差が統計的に有意かどうかを検討する。
- 効果量(Cohen’s d)により,実践的な意味での効果の大きさを評価する。
- 高橋・梅本(1990)との比較
- 高橋・梅本(1990)の実験2(意図学習)では,逐語再生・意味再生ともに生成条件の方が読み条件よりも成績が高かった。本実験の再認テストでも同様の傾向が見られるか。
- 材料を交通法規から心理学専門用語に変更した場合でも,生成効果は安定して現れるか。
- 実際の教育場面への示唆
- 語句の並び替えという簡易な生成操作が,受動的な音読と比べて再認成績を向上させるならば,授業場面への応用可能性がある。
引用文献
高橋雅延・梅本堯夫 (1990). 特定領域の文の記憶における生成効果と知識量の関係—再生と再認に及ぼす乱文構成の効果— 教育心理学研究, 38(2), 157–165. https://doi.org/10.5926/jjep1953.38.2_157


